ローマの人々への個別のあいさつ②(ローマ16:5-7)
16:5 わたしの愛するエパネトによろしく。
次にパウロがあいさつを送るのはエパネトです。パウロは愛情をこめて彼のことを「わたしの愛する」エパネトと呼んでいます。
16:5 彼はキリストのためのアジアの初穂です。
アジアとは小アジア(現在のトルコ)の西端に位置する州で、エフェソスなどの都市がある地域でした。エパネトはエフェソス人だったのかもしれませんが、ローマ書が書かれたころはローマに移住していたようです。
エパネトはアジア州でいち早く回心してキリストに献身した人だったため「アジアの初穂」といわれています。「初穂」と訳されたギリシャ語の語義については11章16節の注解を参照してください。パウロは初穂と呼ぶことで、人に先んじた彼の信仰の歩みに一目置いていることを示しています。
16:6 マリアによろしく。
次いでパウロがあいさつを送るのはマリアです。
16:6 彼女はあなた方のために多くの労を尽くしてくれました。
ギリシャ語原文で「労を尽くした」は不定過去形となっていますから、この箇所は「あなた方のために多くの労を尽くしたことのあるマリア」という文となります。彼女は過去に何らかの出来事で兄弟たちを助けるために一方ならず尽力したのでしょう。迫害のためか疫病のためか、あるいは別の理由かはわかりません。その内容はいちいちローマの兄弟たちに説明することを要しませんでした。パウロがこのことに触れたのは、兄弟たちの中にマリアの労苦の記憶が深く刻まれていたから、そしてパウロもそれを労いたいと思ったからに違いありません。
16:7 わたしの同族であり,仲間の捕らわれ人であるアンデロニコとユニアスによろしく。
続いてパウロがあいさつを送るのはアンデロニコとユニアスです。二人ともパウロの同胞ということでユダヤ人でした。彼らについては他に三つの言葉で紹介がなされています。
16:7 わたしの同族であり,仲間の捕らわれ人であるアンデロニコとユニアスによろしく。
まず「仲間の捕らわれ人」です。いつどこでアンデロニコとユニアスがパウロと一緒に投獄されたのかは明らかにされていません。仮にパウロがこの手紙を書いた時点ですでに複数回の入獄経験があるのなら、そのいずれかの時だったということになります。
16:7 彼らは使徒たちの間でよく知られた人々で,わたしより長くキリストと結ばれています。
次に「使徒たちの間でよく知られた人々」です。「よく知られた」と訳されているギリシャ語episémosの字義は「上に印を付けられた」です。この語には「太鼓判を押された」というような良い意味も、「烙印を押された」というような悪い意味もあります。アンデロニコとユニアスの場合はもちろん良い意味でよく知られた人々でした。
「使徒たちの間で」という言い方だと二人が広義で使徒に含まれているのか、それとも含まれていないのかがやや不明確ですが、ともかく彼らが定評のある人たちだったという趣旨を理解できれば十分です。
16:7 彼らは使徒たちの間でよく知られた人々で,わたしより長くキリストと結ばれています。
アンデロニコとユニアスについては「わたしより長くキリストと結ばれている」ともいわれています。彼らは早い時期にクリスチャンとなった人たちで、パウロから見れば信仰の先輩でした。
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