弱い者への思いやり(ローマ15:1-6)
パウロは14章の教訓を15章1-6節で一般化し、クリスチャン(特に信仰の強い者)の行動指針を提示しています。良心的な問題にかかわらないに場面おいてもクリスチャンは互いを思いやり、会衆を築き上げるよう努めるべきです。これが1-6節の教訓です。
15:1 ですが,わたしたち強い者は,強くない者の弱いところを担うべきであって,自分を喜ばせていてはなりません。
パウロは自分を強い者に含めたうえで強いクリスチャンの指針とすべき考え方を述べます。もし信仰の自由に立って強く行動できる者がその力を誇り、自分の満足を求めるあまり弱い者の良心に無頓着になるようであれば、それは愛の原則にもとる行為と見なされます。
クリスチャンは互いの重荷を分担し、苦楽をともにしなければなりません。(ガラテア6:2) とりわけ強い者には弱い者が抱える種々の弱点を深く思いやり、それを担う力があります。そのようにして自分の強さを活用することこそがクリスチャンとしての善ではないでしょうか。
15:2 わたしたちは各々,築き上げるのに良い事柄によって隣人を喜ばせましょう。
自分を喜ばせることの反対は、隣人を喜ばせることです。他者を顧みないことの反対は、自分の権利を放棄してでも他者の信仰を築き上げようとすることです。
15:3 キリストでさえ自分を喜ばせることはされませんでした。
強い者にとっての最上の模範はキリストです。神の子として自分を喜ばせる権利と力と価値を持つキリストですら罪人の益のために苦難の生涯をお送りになりました。であれば罪深いわたしたちが自分を喜ばせようとするなど極めて恐れ多いことではないでしょうか。
15:3 むしろ,「あなたをそしっている者たちのそしりがわたしに降り懸かった」と書かれているとおりでした。
パウロはここで詩編69編9節を引用します。この詩は正しいことを行った結果として不当な苦しみを味わった経験をダビデが語ったものですが、この内容が完全に当てはまるのはキリストです。「あなた」は父なる神、「わたし」は主イエス・キリストに相当します。
キリストはわたしたちの罪を負ってくださいましたが、それにより邪悪な者が神に投げかけたそしりはキリストの上に降りかかりました。キリストは世を救うためにそのそしりを甘んじて受け入れられたのです。これこそ自分の喜びを徹底的に犠牲にした尊い愛の模範です。
キリストはわたしたちの罪を負ってくださいましたが、それにより邪悪な者が神に投げかけたそしりはキリストの上に降りかかりました。キリストは世を救うためにそのそしりを甘んじて受け入れられたのです。これこそ自分の喜びを徹底的に犠牲にした尊い愛の模範です。
15:4 以前に書かれた事柄は皆わたしたちの教えのために書かれたのであり,それは,わたしたちが忍耐と聖書からの慰めとによって希望を持つためです。
パウロは詩編の言葉をヘブライ語聖書から引用しましたが、これは単なるむかし話ではなく、またキリストに成就して終わった言葉でもありません。時代を超えていまを生きるわたしたちへの大切な教訓でもあるのです。クリスチャンの人生には自分の喜びを犠牲にすることや隣人のために苦難を受けることがつきものですが、このような中でも希望を失わないために不可欠なのが「以前に書かれた事柄」すなわち聖書です。
15:4 以前に書かれた事柄は皆わたしたちの教えのために書かれたのであり,それは,わたしたちが忍耐と聖書からの慰めとによって希望を持つためです。
聖書は自己犠牲の道を歩んだキリストの手本を通してわたしたちに「忍耐」を学ばせてくれます。
加えて聖書は自己犠牲の歩みが神の目に是認されるものであることを教え、わたしたちに「慰め」を与えてくれます。
聖書からもたらされる忍耐と慰めこそがわたしたちの「希望」を支えます。そういう意味もあり、4節の「忍耐と聖書からの慰めとによって」という言葉は「聖書からの忍耐と慰めとによって」と訳し変えたほうがよいと考えられます。
15:5 それで,忍耐と慰めを与えてくださる神が,キリスト・イエスと同じ精神態度をあなた方互いの間に持たせてくださいますように。
忍耐と慰めの経路は聖書であり、それらの源は神です。兄弟の弱さを負い合うためには神からの忍耐と慰めが必要です。忍耐と慰めを与えられた者はキリスト・イエスと同じ精神を持つことができ、キリストの精神を持った者同士は霊的一致に達することができるのです。互いに対して高ぶったり自分を喜ばせようとしたりして会衆の一致を壊すことのないよう注意しましょう。
15:6 それは,あなた方が同じ思いになり,口をそろえて,わたしたちの主イエス・キリストの神また父の栄光をたたえるためです。
すべてのクリスチャンの賛美が一つとなり、父なる神の栄光を掲げることができれば、それ以上にすばらしいことはありません。これはクリスチャン会衆が愛により一致することによって実現します。互いの弱さを負い合うことによって会衆の一致に寄与していきましょう。
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