人間の不義と神の義①(ローマ3:1-4)
自分たちの誇りを砕かれたユダヤ人の中には2章でパウロが指摘したことに異議を唱える者もいたでしょう。3章1-8節はパウロがそのような異議を想定しながら自らそれに答弁する箇所となっています。提起されている異議は四つで、1節、3節、5節、7-8節に書かれています。そしてそれぞれの異議に対する答弁が2節、4節、6節、8節に書かれています。
3:1 では,ユダヤ人の勝ったところは何ですか。
ユダヤ人の側から起こりうる一つ目の異議は「ユダヤ人と諸国民が対等なのであれば、ユダヤ人であることの利点はいったい何なのか」です。
3:1 また,割礼の益は何ですか。
割礼はユダヤ人であることの身分証明でした。「ユダヤ人であることに利点などないということではないか」と問う人は、必然的に割礼についても同様のことを問うでしょう。
3:2 あらゆる点で非常に多くあります。
意外にもパウロは「ユダヤ人であることの利点はたくさんある」と答えます。
3:2 まず第一に,彼らが神の神聖な宣言を託されたことです。
何よりもユダヤ人は神の言葉を委ねられるという特権を得ていました。ヘブライ語聖書はユダヤ人を通して人類に与えられましたし、メシアに関する預言もユダヤ人を通して人類に啓示されました。もし彼らが神の預言に従順であったなら、メシアによって世界を祝福するという約束もユダヤ人を通して成就していたことでしょう。
3:3 では,実情はどうなのですか。ある者が信仰を表わさなかったとすれば,その信仰の欠如が,神の忠実さを無力にでもするのでしょうか。
ここで起こりうる二つ目の異議は「神の約束がユダヤ人に託されたというのであれば、彼らが不信仰になることにより神の約束も実現せずに終わったことになるのではないか」です。
確かにユダヤ人の大多数はイエスに背を向け、神が約束されたメシアへの不信仰を露呈しました。この結果神の約束は頓挫し、神の「忠実さ」すなわち約束したことを必ず果たすという信用も失われてしまうのでしょうか。
3:4 断じてそのようなことはないように! むしろ,すべての人が偽り者であったとしても,神は真実であることが知られるように。
人間の場合は約束を果たせずに「偽り者」となってしまうこともありますが、(詩編116:11) 神に限ってそれはありえません。そもそも約束を成就する神の力は人間の行動の結果に依存してしません。たとえユダヤ人が不信仰によって神に背いても、神はその不信仰さえご自身の目的を遂げる手段に変えて必ず約束を果たし、ご自分の信頼性を貫かれます。
ギリシャ語原文を見ると、この部分は「神を真実にさせよ、しかしすべての人を偽り者にさせよ」というように命令形で記されています。非常に強い言い方で神の真実性が断言されているものと見ることができます。
3:4 「あなたが言葉において義なることが証明され,裁かれる際には勝つため」と書かれているとおりです。
パウロは神の絶対的信頼性を詩編51編4節から証明します。詩編51編は罪に悩むダビデが自分の不実と対照して神の正義をたたえた詩となっており、そこには「神はどんな反対にも打ち勝つ正義を持っておられる」というダビデの確信が表明されています。
この中に「裁く」という言葉が出てきますが、この言葉のもとのギリシャ語krinóは「非難する」や「言い争おうとする」という意味も含む語です。
神には人間の裁きを受ける義務などまったくありませんが、もし神の信頼性を非難して神を訴える者がいれば、つまりそのような方法で神を裁こうとする者がいるとすれば、神は謙遜にも人間の裁きの場に来臨し、完璧な弁明を行ってご自身を訴える者の主張を論破されるということなのです。
神の正しさは反対や障害が多ければ多いほど明らかにされていくものです。そういうわけで神の約束はユダヤ人の不信仰によって阻まれたのではなく、かえってその不信仰によって神の真実が不動であることを実証する機会を得たといえるのです。
神には人間の裁きを受ける義務などまったくありませんが、もし神の信頼性を非難して神を訴える者がいれば、つまりそのような方法で神を裁こうとする者がいるとすれば、神は謙遜にも人間の裁きの場に来臨し、完璧な弁明を行ってご自身を訴える者の主張を論破されるということなのです。
神の正しさは反対や障害が多ければ多いほど明らかにされていくものです。そういうわけで神の約束はユダヤ人の不信仰によって阻まれたのではなく、かえってその不信仰によって神の真実が不動であることを実証する機会を得たといえるのです。
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